本棚もの語り

本棚にみっちり詰まった漫画を端から端まで語り尽くすブログ

本棚A - 6列目(2/2):作者存命だけどおそらくずっと未完の名作「セクシーボイスアンドロボ」

本棚6列目の後半です。

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薄めの本が多いせいか種類が多いですね。「セクシーボイスアンドロボ」から右端の「BL作家の勝負飯」まで語ります。

セクシーボイスアンドロボ」黒田 硫黄(2巻~)

この頃の黒田硫黄作品のなかではもっとも分かりやすくて読みやすい、黒田硫黄入門にはベストだと思われるのが本書、「セクシーボイスアンドロボ」です。とはいえ、あくまでも黒田硫黄作品のなかでの「分かりやすさ」なので、歯ごたえ・噛みごたえはヘビー級。思いっきりどかーんと芝居がかった非日常でありながら、じわじわ日常を侵食するパワーもあります。そう、ラノベなどでよく見られる「日常からひょっこり非日常」系の面白さではなく、「がっつり非日常のなかにぽろっと含まれる日常」に独特の味わいがあるのが黒田硫黄です。と、私は思っています。

たとえば本作では、主人公は一見ごく普通の少女、なのですが、彼女は実にさまざまな声音を使い分けてテレクラのサクラのバイトでお小遣いを稼ぐかたわら、マフィアのドンを思わせる謎のおじいさんと親しくなり、不穏な指令や難題を解決していくある種の「女スパイ」としても活躍します。全然普通じゃない。完全に非日常。だけども、少女が解決するのは日常のほんのちょっと裏側の黒い謎、いや、ちょびっと灰色の難題。

世界観や小道具は現代だし、悪いやつもやたら冷静なくせに間が抜けているので、「すぐ隣にいそう」な感覚もちゃんとある。おじいさん絡みの賭場から危ないお金を持ち逃げした少年は、チョコエッグいっぱい買ってみてもなんか違うなーと感じて、ようかんを手土産におじいさんのいる海外まで行っちゃう。おじいさんは「面白いやつだった」と言って少年を「ようかん」と呼ぶ。そういうのが非日常のなかのちょこっと間の抜けた日常であり、噛みしめるほどに面白くて、何度読んでもニヤニヤできてしまう。

そんな感じだけど、三日坊主は切ないです。切ないがゆえに、一番好きな話かもしれない。

まあそれは置いといて、あと特筆すべきはやはり絵柄でしょうか。面相筆で描かれているらしいのですが、とにかく線が太い。背景も人物もみんな柔らかくてぶっとい線で描かれていて、定規も多分最低限しか使われていません。なので、キャラクターもいわゆる現代風の「かわいい」感じではないです。主人公のニコちゃんなんか、ほんと全然かわいい顔はしていない。でもそこがまたいいんです、憎たらしいほど「生きている」感じがします。しかも人物の描き分けが天才的にうまい。現代の漫画家で人物造形のうまさというと、個人的には浦沢直樹の次くらいに黒田硫黄がくると思っているくらいです。出てくるキャラクターみんな、顔の骨格からちゃんと違う。最近のシャレオツ美麗な漫画によくある、のっぺらぼうの骨格に顔のパーツをモンタージュしただけの絵とは一線を画す巧さです。

というか私は昔、黒田硫黄のこの絵柄にたいそう憧れて、同人誌を描くときに筆ペンをよく使っていました。今でも読み返すとやっぱりいいなあと思い、デジタル環境で使える筆ペンツールはないものかとCLIP内を検索したりします。が、アナログと同じように描けるツールにはいまだ出会えず……はい、余談でした。

この作品で一点惜しいところがあるとすれば、それはおそらく永遠に未完であろうという点です。2003年に2巻が発売されて以降、続刊に関しては音沙汰が一切ありません。1巻からほぼ一話完結ものでしたし、どうしても気になる伏線もとくにないので、つらいですが続きは諦めろと言われれば諦めることも可能な範囲ではあります。言ってしまえば2巻まででもじゅうぶん楽しめますしね。

黒田硫黄を一冊も読んだことがない方には、ぜひ手に取ってみて頂きたい一品です。

「黒船」「大王」黒田 硫黄(各1巻)

黒船 (Cue comics)

黒船 (Cue comics)

大王(1)

大王(1)

同じく黒田硫黄の2冊です。これは初期の短編集ですね。デビュー作の「蚊」が含まれているのが1999年初版刊行の「大王」、ちょこっと遅れて2000年に刊行されたのが「黒船」です。短編集ですが、2~3ページで終わるものから、ちょっとした連作、象や海賊と謎の海洋生物モドキが出てくる100ページほどの中編まで、さまざまな種類の漫画が収められています。

さて、黒田硫黄作品のなかでもっとも“読みやすい”ものとしては先述の通り「セクシーボイス~」としましたが、“最高傑作”かつ私がもっとも“好き”なのは「大日本天狗党絵詞(1) (アフタヌーンコミックス)」だと思っています。なにしろ天狗党はハッピーエンドとは程遠くテーマも全体的に重くて、とにかく読んだ後の虚無感がひどかったし、ちょっとエネルギーが大きすぎてもう怖いくらいで……そうなんです、なにもかも桁外れで怖くなったんですね、なので、迷った末に天狗党は家に置いておかないことにしました。でも、そうは言っても黒田硫黄の初期のあの雰囲気は何度だって読みたくて、そのときこの2冊の短編集を知って、いくつかの短編のなかには天狗党の原型や雰囲気がかいま見える(実際、「黒船」には天狗党の主人公が出てくるアナザーストーリー的な漫画が何本か含まれています)と思われたので、この2冊を大事に取っておくことにしました。

最近は天狗党もこれらの短編集もKindle版が出たので、また改めて買い直そうかなとは思っています。

なお、黒田硫黄の「茄子」は、雑誌アフタヌーンを購読していたときにリアルタイムで追いかけました。一通り読んで、正直そこまで興味のわく内容ではなかったので(いやこれはほんと個人的な感想で、なかには「茄子」を最高傑作と言う人ももちろんいます、ジブリでアニメ化されたのも「茄子」ですしね……)、今の私の本棚にはありません。アップルシードαについても士郎正宗版が好きなのであまり合いませんでした。が、黒田硫黄の動向についてはずっと気にして追いかけています。やっぱり天狗党のショックが大きかったですね。

などと、結局これ天狗党の話しかしてない感じになってきたので、短編集の内容にも触れます。「黒船」に収録されている漫画では、短編連作「肉じゃがやめろ!」が当時にしては珍しいレシピ漫画なのでレシピ漫画好きの方には「黒船」がおすすすめです。ただ中編「鋼鉄クラーケン」は、大ダコとか兵器みたいなイカとか謎の生物が多く絵が見づらいと思うので、かなり読む人を選ぶ印象です。セクシーボイスのロボっぽい髪型の人が出てくる。「大王」はデビュー作「蚊」がやっぱ面白くて、作者の頭のなかみがいったいどうなってるのか本当に意味不明で、そういうとこが好きですね。「象夏」と「南天」は謎のエロスがあります。「メトロポリス」は手塚治虫のオマージュ、これも意味はよく分かりません。「あさがお」の飛ぶおっさんに魅了されてしばらく自分の同人誌にも飛ぶ人を出していた時期がありました。今にして思えばあの頃の私は黒田硫黄に影響されすぎでした……いまだに影響が抜けません。

ここらへんの4冊は読み返しすぎて表紙がかなりボロいです。

「先生と僕 ‐夏目漱石を囲む人々‐」香日 ゆら(全4巻)

全4巻のうち1冊だけしか持っていない漫画です。いつか全巻揃えたいな、と思いつつまだ実現できていません。内容はタイトル通り、夏目漱石漱石の周囲の人々を中心とした、史実に基づく4コマ漫画集。

私がなぜこの漫画をとりあえず1巻だけ買ったのかというと、これまたちょっと遠回りが必要です。まずこの漫画の掲載誌(ウェブコミック誌です)は「コミックヒストリア」と言いまして、2009年~2011年ごろまで存続していました。「ヒストリア」という名が示す通り、歴史を題材にした漫画が多く配信されていて、日本史のほか西洋史や中国史ものもあったようです。私はもともと歴史ものも好きなので軽く興味を持ってはいたのですが、なかでも正岡子規を主人公にした漫画「マイデイア  上 (―正岡子規と秋山真之―)」のファンでした。(「マイディア」も単行本を持っていますが、サイズ違いのため別の本棚に収納しています)まあ「マイディア」について詳しくはその棚にたどり着いたときに語るとして、じゃあほかに同じくらいの時代の漫画でいいのないかな、と探したときにちょうどよさそうだったのが本書「先生と僕」で、それで買いました。確か買った直後に引っ越しがあり、続きを買うタイミングを逃したまま今に至ります。

夏目漱石はもちろん、若いころの芥川龍之介や内田百閒、寺田寅彦正岡子規など、この時代の作家先生陣に少しでも興味があれば、小ネタから有名ネタまで楽しめる内容だと思います。コラムに書簡や漱石の作品も一部含まれていて、読み応えも抜群。逆に言うと、わりと字が多いため、そもそも文学を全然まったく知らないし興味ない、という場合は厳しいかもしれません。とはいえ、4コマなので基本的には読みやすいですし、作者が豊富な知識のなかからきっちり取捨選択して見せてくれている感じがするので、登場人物である作家を知らなくてもとくに問題はないと思います。

早めに4巻揃えたいところですね。

「スピカ ~羽海野チカ初期短編集~」羽海野 チカ(全1巻)

こちらもタイトル通り、「ハチミツとクローバー」や「3月のライオン」の羽海野チカによる初期短編集です。童話っぽいほのぼの話もあれば、ややBLのようなノリの話もあり、初々しい恋バナもありと、いろんなテーマが詰まっています。私は漫画に関しては作家買いをよくするので、ハチクロもライオンも持っているわけだし短編集も所持しておこう、というようなノリです。

そんなわけで、買った当時はあまり深く考えていなかったのですが、今読み返すとやっぱり短編なだけにどれもちょっと「よくできた話」過ぎるなあ、とは思います。小悪党はともかく悪人が絶対出てこない、「善」に寄り過ぎているというか、なのでけっこう話のオチが予想できちゃうんですね。でも羽海野チカの絵の描き方(とくに女性の立ち姿が美しい)やコマ割、カラーページのかわいらしさには多大な魅力を感じますので、手放すようなことはしないと思います。

あとさらっと流しましたけど、羽海野チカのBLモドキはかなりレアという感じがします。

「ゆれつづける」松本 次郎(全1巻)

ゆれつづける

ゆれつづける

以前の本棚紹介で書いたこともありますが、松本次郎の「未開の惑星」に圧倒されて松本次郎にハマり、いろいろ読み漁っていた時期のものです。これは短編集で、エロとグロと暴力です。(身も蓋もない)人によってはわりと抜ける類の漫画ではないかと思います。エロ系出版じゃないにも関わらずエロシーンが豊富。豊富っていうか、むしろそればっかです。

この頃の松本次郎には顔のバリエーションが少ないので、とくに女性はみんな同じ顔に見えます。女性に関しては顔のみならず体もだいたい同じ。なので、逆にエロく感じないような気もしますね。マネキンみたいでちょっと恐怖を感じるのかもしれません。ただそれは嫌いな恐怖じゃないです。ホラーのなかでも妖しい(怪でも不気味でもなく、「怪しい」)系には比較的好きなものが多い。描き分けが微妙なのを逆手に取っているのか、馬のマスクをかぶった人やガスマスクをかぶった兄妹が出てくるところも面白いなと思います。

どの短編も基本的に登場人物は不幸になるか混乱したままか、とにかく救いのない展開が多いです。最後の一本だけちょっと希望が見えるような気もしますが。まあでもそんなのほんのちょっとで、だいたい不幸になったり混乱したり死ぬとか殺すぞとかふと空を見ると空襲されてたり、そういう世界観のなかでひたすら男女の裸体、性交シーンに次ぐ性交シーン。でも度を超えた暴力とかエロとかってやっぱり奇妙なおかしさがあって、読んでいるといい具合に脳の力が抜けます。

救いのない話(※同人誌のことです)を描きたいときなどに読み返すことが多いです。

「ウエンディ」松本 次郎(全1巻)

ウエンディ (Ohta comics)

ウエンディ (Ohta comics)

こっちは松本次郎の一冊目の単行本です。デビュー作ではないと思いますが、初連載作品といったところでしょうか。最近の作品に比べるとかなり絵が荒く、話はもっと荒いですが、作画における偏執的な線の多さや爆発・破壊描写へのこだわりは今以上ではないかと思います。こういう荒削りな作品ほど作者の「描きたい」が強く感じられると思うので、そういう点では非常に気に入っている作品。ですが、内容がすごく「よい」かというと、別にそんなことはないと思います。

ストーリーは帯やAmazonの紹介文にもある通り、ピーターパンを下敷きにしたボーイミーツガール風のサイコアクションもの、とでも言いましょうか。現実と、現実でないどこかの世界を行き来する主人公の少女を「ウエンディ」に見立て、さまざまな理不尽と困難に巻き込まれつつも彼女がやがて事故で死んだ少年の魂と再び出会う可能性が示唆されて終わる、という、言葉にすると簡単な話に見えますが、「理不尽」「困難」の度合いがやはり松本次郎ならではというか、性と暴力、家庭不和などに加えて殺人鬼とか変態とかいろいろ出てきます。

私のように初期の松本次郎にハマった人であれば間違いなく楽しめる作品ですが、そうではなく「フリージア」以降の作風が好きという方には物足りないというか、荒すぎるかもしれません……書いてたらフリージア読み返したくなってきました。松本次郎はほんと、万人には好かれないかもしれないけど少なくない一定数のファンが確実にいて、どんな作品を描こうとも決してその固定ファンが離れないタイプの漫画家だと思います。

「漫画家ごはん日誌」(アンソロジー)

漫画家ごはん日誌 (フィールコミックス)

漫画家ごはん日誌 (フィールコミックス)

私は料理をするのでレシピ漫画とか食にまつわる漫画はよく読むのですが、この「漫画家ごはん日誌」の見どころはそこ(だけ)ではないんです。

基本的には本書、大人の女性をメインターゲットとした漫画雑誌FEEL YOUNGに関係のある漫画家さんが1ページずつ食に関するエッセイ漫画を綴っていく、という構成です。女性向け雑誌のため女性漫画家さんが多いなか、カラスヤサトシ福満しげゆきなど、ちらほら男性も見かけますね。あと、BLと一般誌を行き来する漫画家さんも多いです。まあそのへんはFEEL YOUNGの特徴ですね。ヤマシタトモコや秀良子、のばらあいこのエッセイが見られるのは嬉しいです。とりわけ阿仁谷ユイジの食卓があまりに想像通りというか、少し泣けます。

さて、しかし本当に見どころはそこ(だけ)ではない、という話に戻ります。

この漫画、なんと巻末にですね、あの「COOL」「テニスの王子様」など不朽の名作の数々をこの世に生み出された巨匠、許斐剛御大のインタビュー記事が掲載されているんですよ。

もう一度言います、許斐剛御大のお写真及びインタビュー記事が掲載されているんです。それがたった800円かそこらで読める。こんなにありがたいことはありません。許斐先生の受け答えがいちいち面白く、なるほどこういう御方だからこそ大石が焼肉奉行だったりしたのだな、と納得感もありますので、許斐先生に傾倒したことのあるすべての方におすすめしたいと思います。

許斐先生最高です。

「BL作家の勝負飯」(アンソロジー)

BL作家の勝負飯 (ポーバックス Be comics)

BL作家の勝負飯 (ポーバックス Be comics)

  • 作者: 秋葉東子,麻生ミツ晃,天城れの,新井煮干し子,井戸ぎほう,エンゾウ,神楽坂はん子,嘉島ちあき,梶本レイカ,カワイチハル,河井英槻,北沢きょう,小嶋ララ子,四宮しの,蔓沢つた子,永井三郎,博士,蜂不二子,羽生山へび子,ぱんこ。,ひなこ,藤谷陽子,松本ノダ,ミナヅキアキラ,モチメ子,毛魂一直線,本仁戻,ymz,雪路凹子,吉田ゆうこ,倫敦巴里子,碗島子
  • 出版社/メーカー: ふゅーじょんぷろだくと
  • 発売日: 2014/07/24
  • メディア: コミック
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商業誌に掲載されたことのあるBL漫画家なんと総勢61名による、「修羅場における食事」をテーマとしたエッセイ集です。各エピソードは1ページないし2ページで語られており、つまみ食いならぬ「つまみ読み」しやすく、さくさく読める一冊。上述の「漫画家ごはん日誌」と構成はよく似ていますが、本書では修羅場に重点が置かれているため、ほのぼの度・こだわり度が低め、笑いの要素が多めです。

(本書はふゅーじょんぷろだくとが発行元で2014年8月刊、漫画家のほうは祥伝社で2015年5月刊、偶然というかこの手のテーマは昨今流行っているので流れのようなものだと思い、本棚には並べて置いています)

なお修羅場というのは、原稿の〆切まで残り時間が少なく追い詰められている状態、を指します。漫画家や小説家、アニメーターなど、創作系の仕事をしている人がよく使う言葉なのかもしれません。あと、商業誌とはまったく無関係の同人活動においても頻繁に使われる印象があります。

かく言う私も、趣味ですが同人誌制作をしているときは「修羅場」に毎回なります。毎回ということは100回くらいは修羅場あったんじゃないかと思いますし、なので、「修羅場ご飯」というのはめちゃくちゃ共感できて面白いです。

とくに「修羅場前になると飯なんか食っていられない」系がめっちゃ分かります。食べると眠くなるし、胃に血流がいっちゃうからですかね、だるい感じになって作業が進みづらい、まだ空腹のほうがマシなんですよね。なので、本仁戻さんの「エア飯」は泣きながら笑いながら読みました。ドーピング系も超分かります。私はレッドブル派でした。でもカフェインの錠剤とコーヒーとレッドブルみたいなフルコースにしたら悪寒と目眩と吐き気で死にそうになり、つまりカフェインの急性中毒ですね、本当に死ぬ思いをしたのでその後二度とやっていません。かわりにバナナとカロリーメイトを常備するようになりました。

このように、読みながら自分のことを思い出して思わず自分語りしたくなるのも本書の特徴です。なので創作活動をして追い詰められた経験のあるすべての人におすすめかもしれません。学生なら試験とか論文とか卒制とかでも近い体験をしているかもしれませんね。ほかに仕事の「納期」直前とか……挙げだしたら意外ときりがなかったです、該当者=全人類とすべきだろうか……。

ただ私は「家族飯」系の話は苦手で、そこだけちょいちょい飛ばし読みしています。(そんな理由で作家さんを嫌いになることはありませんが、なんとなく個人的な気持ちの問題です)

そして本書の最大の特徴というか、面白い点がまだもうひとつありまして、それぞれエッセイの内容から「麺」「豆腐」「パン」のようにざっとカテゴライズされていて、それでそのカテゴリーごとに区切りページが作られているのですが、そこになんか謎のBL的なメッセージが載せられているんですよ。たとえば「スイーツ」の項には以下のような説明文(?)が付与されています。

スイーツ(※1 筆者注:分類名)
Sweets(※2 同英語表記)
僕のチョコバナナを召し上がれ(ここにハートの絵文字)(※3 謎のBL説明文)

数えたら分類は14通りあり、各項ごとにこのようななにかしらの小話やセリフめいたものが書かれているわけです。これ分類を考えるのも分類するのも項目ごとに小話を用意するのも本当に大変だっただろうなと、編集部の苦労を思わずにはいられません。さすが独自路線を走り続けるふゅーじょんぷろだくとさんです。敬意をこめて私は全部読みました。それこそ編集部になにか栄養のありそうなものを差し入れたくなりますね。

(次の棚へつづく)