本棚もの語り

本棚にみっちり詰まった漫画を端から端まで語り尽くすブログ

次なに読もう、ってなったときの漫画の探し方について

私は漫画が大好きなので、あまり親しくない人から「趣味はなんですか?」などと聞かれた際には「漫画を読むこと」と答えることがあります。そうすると、大抵「おすすめはありますか?」「最近どんな漫画がおもしろかったですか?」などと重ねて問われます。これらは私にとって、なかなか答えにくい難題です。

なぜなら、問いを発している相手が普段どんな漫画を読んでいるのか、あるいは、普段ほとんど漫画なんか読まないけどとりあえず漫画が好きって言われたからおすすめ聞いとこう、くらいのテンションなのか、その辺が分からないと「ちょうどいい感じの答え」を用意できないからです。

たとえば、「ONE PIECE」や「DEATH NOTE」が好きで一番ハマった漫画は「SLAM DUNK」、というような相手に、いきなり華倫変をすすめるわけにはいきません。いや別にそこまでメジャーな漫画好きじゃなくても華倫変をすすめられたら困惑すると思う。かといって、新井英樹岩明均が好きで全網羅してるよ~みたいな相手に、「鋼の錬金術師」をすすめるのもなんかちょっと違う……かもしれない。漫画といえばカイジ、アカギ、以上、みたいなタイプなら、「ナニワ金融道」は多分すすめても問題ないラインだろうけどギリアウトの可能性も……。

そんな感じで、「おすすめの漫画」を尋ねられるたび「ちょうどいい感じの答え」に窮し、困惑しつづけてきた私ですが、最近やっと気づいたことがあります。

「おすすめの漫画」を誰かに聞きたくなる心理とはつまり、自分で「次なに読もう」を考えるのが面倒だったり億劫だったり、ということなのではないか。もちろん世間話としておすすめを尋ねているケースも大いにあるでしょうが、それだけではなく「おすすめが知りたい」という気持ちが少しでもあるとしたら。ふむ……「漫画の選び方」って思ったほど共有されている印象がない、「おすすめ漫画」を伝えるより、「漫画の選び方」を伝えたほうが意義がある、かもしれない。

そんなわけで、ここからは私の考える「漫画の選び方」について書いてみたいと思います。前置きがちょっと長かったですね。

さて、ここから紹介する方法は以下の4点です。なお、私が一番簡単で且つ精度が高いと思っている選び方は4番なので、時間のない方は4番だけ読むといいのではないかと思います。

  1. 書店でジャケ買い
  2. 作家買い
  3. Amazonやブログのレビューを参考にする
  4. 漫画雑誌から選ぶ

1. 書店でジャケ買い

「なんか読みたい」ってなったとき、物理的な書店に潜入し、自らの目で陳列棚や平置きコーナーを眺め、気の向くまま予算の許す限り買い漁るというやり方。インターネットがなかった時代から存在するオーソドックスな「買い物」の方法であります。

ジャケ買い(ジャケがい)とは、レコード、CD、DVD、本などのメディア商品を内容を全く知らない状態で、店頭などで見かけたパッケージデザインから好印象を受けたということを動機として購入すること。

ジャケ買い - Wikipedia

はい、これを漫画に対してやるということですね。

表紙(カバーイラスト)だけは自分の目で好みかどうか確認できる、しかし、その先の面白さは賭けになる、そのような買い方です。予算に余裕があり、且つ、絵に対する自分の感性がそこそこ出来上がっている人におすすめのといえるでしょう。また、冒険心があるとさらに楽しいと思います。

このジャケ買い、私はわりと好きで、よくやります。

補足すると、私が漫画を評価する際のポイントとしては、絵・ストーリー・演出(コマ割りや擬音、セリフまわしなど)の3点があります。この3点のうち、ジャケ買いなら少なくとも「絵」については自分の気に入るものを選ぶことができます。とはいえ、表紙詐欺というか、表紙のカラーイラストは見事だが中身のモノクロ原稿はタッチの差があって微妙だった……というようなこともしばしば起こり得るので、気に入る「可能性が高い」だけです。ただ、表紙のデザインと中身の差異に落胆するのも、まあそれはそれで楽しいと思っています。私は漫画がめちゃくちゃ好きなので、好きになれそうなものだけ読みたいわけじゃなくて、嫌いになりそうなものも読みたいからで、好き嫌い両方の感性を磨くにはできるだけたくさんの漫画を手当たり次第に読むのもまた遠回りではあるけどよい方法だと思うからです。

と、ここまで思い切りよく漫画を読む人でなくても、「次なに読もう」ってなったときに、書店で自分の感性のおもむくままジャケ買い、今まで一度もやったことがないという人は、まあ一度くらいやってみるのもいいのではないかと思います。意外とそれまでにはなかった出会いが待っていたりするものです。

2. 作家買い

気に入った作家さんがいる場合に、同じ作者の漫画をひたすら追いかける、というやり方。

これもオーソドックスで、分かりやすいやり方ですね。とくに説明は要らないかと思います。

ただ、「次なに読もう」に陥るパターンとして、気に入りの作家さんの数が少なく、新刊待ちのあいだ手持ち無沙汰になって……となる流れが多いような気もします。これのみではなかなか新規開拓ができないので、なにか別のやり方と併用する必要がありそうです。

3. Amazonやブログのレビューを参考にする

昨今ではこの方法がもっともポピュラーではないでしょうか。要するに、「先に読んだ人たちの意見を参考にする」やり方ですね。Amazonではレビューに対して参考になったかどうかの指標も蓄積されているので、他人の意見に重み付けまでされたものをチェックすることができる。便利な時代になりました。お手軽なので、多くの人が採用しているやり方ではないかと思います。

しかし私は、この「レビューを参考にする」やり方はあまりよくない方法だと思っています。少なくとも、自分が「次なに読もう」となったときに積極的には採用しないやり方です。

なぜかというと、他人と自分の感性がなんでもかんでも合うようには思われないからです。いや、そこは「感性の合うレビュアー」を見つければいいだけじゃない、という意見もあるとは思うのですが、「感性の合うレビュアー」を見つけるのもまた大変なことです。レビューを検索するサービスはあっても、レビュアーを検索するサービスというとちょっと思いつきません。

また、レビューの情報だけを根拠にして漫画を選ぶと、いろいろと弊害もあります。

自分の感性で選んだ場合は失敗しても諦めがつきやすいですが、インターネットの評価を根拠にした場合、どうしても「騙された」というような、他人の責任にしたくなる感情がじわじわ染み出してきて、精神の健康にもよくなかったです。

そういった失敗を経て、「このマンガがすごい!」系や、人気ブロガーさんによる「今年おもしろかった漫画ベスト○○」などの記事は、目を通したとしてもそれだけを理由に読むというようなことは、私はしなくなりました。人気のある作品や売れ筋がすべて自分にとって「よい」とは限らないですし、売れないからといってなにもかも面白くないわけではありません。

やはりレビューは「参考にする」程度にしておき、精度の高い情報としては扱わないほうがいいだろうと思います。

4. 漫画雑誌から選ぶ

私の一押し、もっとも合理的で外れが少なく、且つ漫画がそこそこ好きな人にとっては楽しいのではないかと思うやり方がこれ、「漫画雑誌から選ぶ」です。

どういうことかというと、まず漫画雑誌を一冊選びます。えっ漫画雑誌とか読んだことないしハードル高い、という方、大丈夫です、簡単です。

「なんか漫画読みたい、けど次なに読もうかな」と考えている時点で、今までに面白いと思った漫画がなにかしらあるはずです。その漫画を手にとって、背表紙や巻末の奥付ページを見てみてください、必ずどこかに「○○コミックス」などと書いてあると思います。この「○○」が雑誌名です。これで少なくとも一冊は簡単に見つかりましたね。

たとえば今「進撃の巨人」19巻が手もとにあるので例を出しますと、背表紙には「MAGAZINE KC」、巻末の奥付ページ(ISBNや版数が載っているページです)に「作品初出/別冊少年マガジン2015年12月号~2016年3月号」とあります。なので、「別冊少年マガジン」という漫画雑誌に連載されていたのだということが分かります。

さて、そこまで見当がつきましたら、次はこの「別冊少年マガジン」を書店で探すか、ググります。おすすめは、ググるほうです。(※ググるのは場所を選ばずできるため)すると、別冊少年マガジンのサイトがヒットします。こちら。

こういう漫画雑誌の紹介サイトを見ると、現在の連載陣について目次や解説があり、作品によっては特設ページがある場合もあり、さらに電子版がある場合は試し読みもできます。

この「試し読み」が重要です。試し読みをすれば、好きになれそうな漫画、もっと読んでみたいと思う漫画に出会うこともあるでしょう。もっと読んでみたい、そうです、つまり「次なに読もう」に対する回答がここで早くも得られるわけです。

好きな作家の作品が掲載されている雑誌など、なんでもいいので漫画雑誌を一冊選ぶ、それを試し読みして次に読みたいものを決める、これが「4. 漫画雑誌から選ぶ」の流れです。

この手法であれば、次に読みたいものを自分の感性によって決められます。レビューのような他者の視点を通さないので、自分の感性フィルターに送り込む情報の精度が高い。また、カバーイラストのみから選ぶジャケ買いよりはるかに情報が多いので、失敗もしにくいです。場合によっては、普段ジャケ買いなら選ばないような作品のなかに面白いものを見つけることもあり、お得感が大きいですね。

さらに漫画雑誌は一貫したテーマを持って連載陣を選んでいることが多く、一人の編集担当さんが複数の連載を持ってることも少なくないため、連載作品群にはある程度の親和性があります。つまり、面白い作品と出会えた場合、それ以外の作品も面白いと思える可能性が高いということ。要するに、「似たもの検索」までもが簡単にできるということです。

この例では既に好きな漫画が手もとにある場合の選び方を挙げましたが、もちろん書店へ行って漫画雑誌コーナーで表紙などの情報から選んでもいいですし、好きな漫画家さんが多そうな雑誌を選ぶとか、新創刊された雑誌を敢えて選んでみるとか、いろんな選び方が考えられます。

なお、最近では紙媒体でなくインターネット上の雑誌もありますから、そこから手を出すのもいいと思います。「ワンパンマン」や「モブサイコ」、今や大人気ですが、インターネット上の雑誌連載作品です。

例:

www.tonarinoyj.jp

urasunday.com

などなど。

ワンパンマンの原作に至っては、誰でも投稿できる「新都社」という投稿サイトが初出です。雑誌だけでなく投稿サイトも今はいろいろあるので、プロの漫画家ではない人々の作品もチェックしたい、という場合は投稿サイトも一通り見てみるといいかもしれません。

さて、「雑誌から選ぶ」方法の利点、「自分の感性で選ぶことができる」のほかに、実はもうひとつあります。それは、「雑誌編集部に対するアピールができる」点です。

ちょっと話が逸れるような気もしますが、単行本になっている漫画作品の多くは、ほぼ漫画雑誌が初出です。(そうでないパターンは「描き下ろし」)漫画家さんは、漫画雑誌に連載をすることで雑誌社から原稿料を得て、単行本も雑誌社と協力して刊行し、そこから印税を得ます。漫画家さんの収入はこの二種類、我々読者は単行本を買うことで漫画家さんに直接投げ銭することができますが、もうひとつ、雑誌を買ったり読んだりする行為でも漫画家さんに間接的な投げ銭ができます。というか、雑誌社が収益不足でつぶれてしまったら、連載のつづきは最悪なくなってしまうし、単行本も出せません。好きな漫画家さんを応援したいのであれば、その漫画家さんが連載している雑誌も同時に応援したほうが、より漫画家さんのためになります。

このように、漫画雑誌が漫画界における大きな役割を担っていること、これはすごく重要なポイントだと思いますが、それこそAmazonレビューやなんかを見ているとあまり意識されていないような印象を受けるので、もっと広まってほしいと思うところです。

余談として、私は好きなBL漫画を一冊見つけると、その単行本と同じレーベル(「出版社」のなかの「雑誌編集部」が刊行している出版物をまとめて呼ぶ際の表現が「レーベル」)の漫画を10冊でも20冊でもまとめ買いする、というやり方をしていた時期がありました。非常に捗りました。

まとめ

次、なに読もう、ってなったときは、漫画雑誌を試し読みして決めるのが一番楽しくておすすめですよ、という話でした。